阪神大震災関連で思い出したこと。
今から14年ちょっと前の1998年10月。
当時2年がかりでNHKのテレビ番組「四国八十八ヶ所」の収録に同行するため 毎月四国に通っていました。
33番雪渓寺で収録中、歩き遍路で奇妙な出で立ちの初老の男性が目につきました。
当時ブームだった「観光目的」や「健康のためのハイキング」とは一線を画す雰囲気で なおかつ異様だったのはその日焼けした無骨な指にはめられた数々の指輪と、数珠ではなく 幾重にも重ねて身につけられたネックレスとブレスレット。
そして白装束に油性インクで殴り書きしたような「南無大師遍照金剛」の文字。
最初目にしたときは「パンクなオヤジ」程度にしか思わなかったのですが、どうも漂わせている雰囲気が異質でした。重かった・・・
同じように気付き、観察していた番組プロデューサーが声をかけ 話をうかがってみると・・・
それらのアクセサリー類はその3年前の阪神大震災で亡くなられた奥様とお嬢様の形見ということで、ご自身はその時間 夜明け前からの魚釣りに出かけておられたそうです。
地震のあと急いで家に帰ると家は倒壊していて、自分以外誰も助からなかったそうです。
仮設住宅に入っておられたのですが、自分の工場も潰れ、家族も無くし、もはややり直す気力もなくされたそうです。
で、1年に1度 歩いて八十八ヶ所を 形見を身につけて供養として回っておられるとのことでした。
急遽番組内でゲストの吉増剛造氏との対談ということになり、その後NHK出版から刊行された本にも掲載されました。
今でも時々思い出します。
改めて、あの日に尊い命を奪われた方々のご冥福をお祈りいたします。