月曜日, 9月 13, 2010

メディスンの束「巣立つ鷲の月」より

大昔、動物がついにひとへの我慢を切らした。
動物を狩り殺しても、その一部しか食べず、あとは腐るままにする。
川や湖で魚を捕っても、その骨を火や水に放り投げる。
ひとを生き延びさせるために犠牲になることに合意した動物たちに感謝するこころをなくし、動物が少なくなっても狩りを続けたからだ。

そこで動物たちは対策を決めようと会議を開いた。
ひとに戦争を仕掛けようという意見も出たが、熊が「弓矢を持つ人間には勝てない」と止めた。
話し合いの末、ひとに病いを送って懲らしめることにした。
鹿は関節痛やリューマチ、頭痛を、鳥は腹痛を、と動物たちは様々な病いをひとにもたらした。

しかし病いにかかり苦しみだしたひとの姿に動物たちは哀れを感じた。
そこで、一部のひとたちの夢に出て、病いにかかった理由を告げ、癒しをもたらす歌を教えることに決めたのだった。
動物たちは、薬となる植物の見つけ方や、動物のように裸になって這いつくばって入り心身を清めるスウェット・ロッジの儀式も教えた。

すでに送られた病いからひとは逃れることができないが、動物に夢で習った歌を覚えている癒しびとの助けを借りれば、ひとは病いから立ち直ることができるようになった。
病いを送った動物を真似て踊り、その許しを乞えば、動物はひとを癒してくれる。
そして癒されたひとが狩りのしすぎを慎み、死んでくれた動物を丁寧に扱い続ければ、病いはぶり返さない。

ひとは粗末に扱った動物から、懲らしめとして病いを送られ、同じ動物から病いを癒す術も授かったのだ。


(「アメリカ・インディアンの書物よりも賢い言葉」-- クリー族の伝説)